【将棋】原始棒銀について
先手が矢倉を目指してきたときの、後手側の選択肢の一つに挙げられる原始棒銀戦法。
今回はそのちょっと不思議な変化について。
(初手から)
1.▲7六歩
2.△8四歩
3.▲6八銀
4.△3四歩
5.▲6六歩
6.△8五歩
7.▲7七銀
8.△7二銀
9.▲7八金
10.△8三銀
11.▲5六歩
12.△8四銀
13.▲7九角
[基本図]
後手の棒銀に潰されないように、引き角にしてさらに5筋も突いて備えた局面を基本図とし、今回はこれついて考察する。
5手目▲7七銀とした場合の後手の棒銀の手順も考えられるのだが、少し調べてみたところ、どうやらこちらは先手に飛車先を切られてあまり面白くないようである。
(基本図から)
14.△6四歩
15.▲6八角
16.△6五歩
17.▲同歩
18.△9五銀
[Ⅰ図]
先手の備えに対して、後手は6筋を突き捨てて角筋を通すことで攻めを繋げようとしてくる。次に△8六歩▲同歩△同銀とするのが狙いで、▲8六同銀に△9九角成と香車を取り返されて陣形を突破されてしまう。
[参考A図]
(Ⅰ図から)
19.▲5五歩
20.△同角
21.▲5八飛
22.△8六歩
23.▲同歩
24.△同銀
25.▲5五飛
26.△7七銀成
27.▲同桂
28.△8九飛成
[Ⅱ図]
▲5五歩~▲5八飛の三手一組は絶対の手順。相手の攻めの軸となっている角を呼び込み、逆にこちらの飛車の目標にしてしまう。
これ(21.▲5八飛)には一旦△4四角と応じるのが無難だが、先手から▲5五歩と再度同じ場所へ歩を打たれて角筋を止められては局面が収まってしまうので、後手は果敢に△8六歩と攻め、角を犠牲に飛車を成りこんできた。
Ⅱ図以下は▲7九銀△6七歩▲4六角△9九龍として、後手としては次に香車で飛車の捕獲を狙うくらいだが、▲6四歩△5四香▲同飛△同歩▲6三歩成となり、飛車は取り返せてもと金が大きく先手有利。[結果図Ⅰ]
と、ここまではよく知られた定跡手順。
角筋を絡めた後手の攻めに対して、先手の▲5五歩~5八飛が巧妙な指し方で、この手順ではうまくいかないことがわかる。
そこで、[基本図]から△6四歩とせずに、先に△9五銀を出てはどうだろうか。
(基本図から)
14.△9五銀
15.▲6八角
16.△6四歩
[Ⅲ図]
銀が先に出てしっかり力を溜め、次に△6五歩▲同歩△8六歩を狙っている。
しかしここで▲5五歩△同角▲5八飛とするのはいかにもやりすぎで、△4四角▲5五歩となって先手歩損でつまらない。
では先手どうするか。
(Ⅲ図から)
17.▲9六歩
18.△8四銀
19.▲2六歩
20.△3二銀
21.▲2五歩
22.△3三銀
23.▲5八金
24.△3二金
25.▲6七金右
26.△9四歩
[結果図Ⅱ]
「棒銀には端歩を突くな。」とよく言われるが、現状△6五歩~8六歩の攻めが厳しく、これが決まってしまってはたまらないので、端歩を突いて銀を追い返し、その間に局面を収めることを考える。
▲9六歩△8四銀に▲5八金と固める手もありそうだが守勢一方になりそうなので保留。先に▲2六歩と飛車先の歩を伸ばして後手の動きをけん制する。
後手は飛車先を守ってから端歩を突き返し、タイミングを見て端から攻めを狙う。
[結果図Ⅱ]は後手の駒組みが立ち遅れており、また6四歩を突いてあるために角の運用が難しく先手がやれそうに思う。