【将棋】▲5七銀左急戦・棒銀戦法【VS四間飛車】
私は最近、先手番で後手四間飛車に対して急戦をやるようになりました。
現在は一般的には四間飛車に対しては居飛車穴熊が最有力と言われており、確かにプロアマ問わずあらゆる実戦において居飛車穴熊の勝率は高めなのですが、
自分が先手番の際、後手の振り飛車模様の出だしに対して最初から振り飛車を警戒して舟囲いの駒組みを作ってしまうと、その直後に相手が雁木などを明示してきた場合に対応がわからず作戦がおぼつかないことがあり、困っているという事情がありました。
そこで、急戦を勉強し、振り飛車模様からなかなか飛車を振らずに態度を決めてこない後手[参考図]に対しては早めに▲3六歩を突いて居飛車でも振り飛車でも急戦をする方針で指すことにしました。
(初手から)
1.▲7六歩
2.△3四歩
3.▲2六歩
4.△4四歩
5.▲4八銀
6.△3二銀
7.▲6八玉
8.△4二飛
9.▲7八玉
10.△7二銀
11.▲5六歩
12.△9四歩
13.▲5八金右
14.△5二金左
15.▲2五歩
16.△3三角
17.▲9六歩
18.△4三銀
19.▲3六歩
20.△6二玉
21.▲6八銀
22.△7一玉
23.▲5七銀左
24.△8二玉
[Ⅰ図](急戦基本図)
後手藤井システムの出だしから先手が急戦を選択し、舟囲い▲5七銀左急戦VS四間飛車の将棋になりました。19手目の▲3六歩が作戦のターニングポイント。これにより先手は急戦を明示したので、それに備えて後手は玉を美濃囲いへ囲っていきます。
(Ⅰ図から)
25.▲6八金直
26.△5四歩
27.▲3七銀
[Ⅱ図]
3手進んで[Ⅱ図]。
▲6八金直は一手様子を見て後手との間合いを量る意味と、金銀の連結をよくして戦いに備える意味があります。
舟囲い▲6八金型は▲6九金型よりも囲い自体の強度は増しているのですが、反面一段目が薄く、また将来△8四桂~△7六桂とする筋が金に当たってきてしまうという弱点も生じています。
対して後手の△5四歩は後々△4二角~△6四角と角を転換して先手の攻めをけん制する含みと、先手から▲5五歩と中央の位を取られるのを防ぐ狙いがあると思います。
先手は手順を尽くしてから、満を持して▲3七銀と上がりました。棒銀の明示です。
この手では▲4六歩~▲4五歩と早仕掛けする指し方や、▲4六銀から左銀を前線に繰り出して斜め棒銀をする手もあります。いずれも定跡化された有力な作戦で、舟囲い急戦のほとんどはこれら(棒銀、▲4六銀左急戦、▲4五歩早仕掛け)のいずれかになるのではないでしょうか。
(最近はelmo囲い急戦なるものも出てきているようですが)
(Ⅱ図から)
28.△1四歩
29.▲1六歩
30.△1二香
31.▲4六歩
[Ⅲ図]
後手は△6四歩~△6三金と高美濃囲いに組み換えるのが常套手段ですが、先手の▲2六銀からの速攻に対してあくまで△6四角と出る筋を残しておきたいのと、金を上がると右辺が薄くなるという理由からさらに間合いを測ることが多いです。30手目の香車浮きは大事なところで、香車を角筋から避けておくだけでその後の形勢がかなり違ってきます。
また先手の▲4六歩も必要な一手で、これを抜かすと棒銀は成功しません。
攻めは複数の筋を絡めて行うのが基本ですね。
(Ⅲ図から)
32.△6四歩
33.▲2六銀
34.△3二飛
[Ⅳ図]
後手はもうこれ以上待つ手がないので、△6四歩として玉を固めにかかりました。この一手をみて▲2六銀と上がるのが勝負の呼吸で、先手はここからいよいよ仕掛けていきます。
後手は3筋に飛車を回って戦いに備えます。
(Ⅳ図から)
35.▲3五歩
36.△5一角
37.▲3八飛
38.△6二角
[Ⅴ図]
先手の▲3五歩の仕掛けに対して、後手は△5一角と引いて飛車筋を通してきました。この手では△6五歩のような手もあり、以下▲3四歩△同銀▲3五歩△4三銀▲3七銀[A図]のように定跡手順は進みます。
[Ⅴ図]最終手の△6二角は抜かりないところで、▲3四歩△同銀のときに▲4四角と出る手を消しています。
(Ⅴ図から)
39.▲3四歩
40.△同銀
41.▲4五歩
42.△4三金
43.▲4四歩
44.△同金
45.▲4五歩
46.△4三金
47.▲3七銀
[Ⅵ図]
39.▲3四歩 40.△同銀 41.▲4五歩 に42.△同歩は43.▲3三歩で後手しびれます。よって42.△4三金の応援で受けていきます。
先手は▲4四歩△同金に再度▲4五歩と打って後手の金を後退させます。これにより▲1一角成の筋が生じましたが、同時に2六の銀が角当たりになっています。まずは▲3七銀と引いて当たりをかわしておくのが大事で、いきなり成りこむと△2六角と銀をタダ取りされて容易ではありません。
(Ⅵ図から)
48.△3三桂
49.▲4六銀右
50.△4四歩
51.▲同歩
52.△同金
53.▲4五歩
54.△同桂
55.▲同銀
56.△同金
57.▲3三歩
58.△4二飛
59.▲3四飛
60.△3五金
61.▲5四飛
[Ⅶ図]
戦いが進んで[Ⅶ図]。後手の4筋からの反発に対して先手は銀を取り返して飛車を捌くことに成功しました。定跡の本ではこれで先手が有利ということのようですが、もう少し考察をしてみます。
まずは[Ⅶ図]以下①△4九飛成と飛車を成り込む手から。これには▲5三銀が当然ながら厳しく、
以下
ⅰ.△7一角▲5二銀成△6三銀打▲6一成銀△5四銀なら▲7一成銀△同玉と進み、▲5九金打△2九龍と龍を弾いてから▲4四角[B図]として先手優勢です。
またⅱ△5三同角▲同飛成では後手は角を捌けはしましたが、角桂vs銀の交換で先手の駒得が大きく、さらに後手の片美濃囲いが薄めなこともあってやはり先手有望なようです。▲5四角あたりの手が急所で、後手の龍が4筋からどいたときに▲4二龍と入るような展開になれば勝てそうです。
また、[Ⅶ図]以下②△6三銀打が粘りのある手だと思うのですが、▲5三銀△5四銀▲4二銀成と攻め合って、後手は銀が上ずっている、先手は桂得&寄せに使えそうな成駒ができているということで依然として先手がやれるようです。
[Ⅶ図]以下③△5三銀なら▲5五飛と引き、以下△3六金には一回▲4八歩と受けておいて、△5四歩には▲8五飛[C図]と逃げれば駒の働きの差と損得両面で先手に分があり、▲3二歩成から馬を作る手が受けづらく先手優勢です。